せん断力線図と曲げモーメント線図の描き方【材料力学】

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梁の曲げの問題を考えるとき、最も基本となるのが、せん断力や曲げモーメントを導出することです。

今回は、せん断力と曲げモーメントをグラフ化したせん断力線図と、曲げモーメント線図について解説します。

せん断力線図や曲げモーメント線図を描くことで、スムーズに梁の曲げの問題を解くことができるようになります。

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梁の支持条件

梁の曲げについて考える前に、梁の端での力学的特性について考えていきます。

はりの支持条件

代表的な梁の支持方法である、固定支持単純支持移動支持の力学的特性について解説します。

固定支持

壁のような剛体壁に固定された状態を固定支持と呼びます。

固定支持端では、回転移動や平行移動ができず完全に固定されています。

単純支持

水平方向への移動のみを拘束し、回転移動を許す固定方法を単純支持と呼びます。

単純支持では、水平方向への移動はできませんが回転移動ができることが特徴です。

移動支持

最後の支持方法は移動支持です。

移動支持は、単純支持端に車輪が付いたような状態と考えてください。

そのため、移動支持は、回転移動も水平方向への移動もできる点が特徴となります。

なお、三つの支持方法は、支持端が鉛直方向には移動しないことを前提としています。

現実の固定状態はこれらの支持方法に加えて鉛直方向への移動もあるため、複雑な状況となります。

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せん断応力と曲げモーメントの正方向

梁の支持方法について解説した理由は、支持端での力やモーメントの有無が支持方法により決まるためです。

例えば、移動支持では水平方向にも回転方向にも自由に移動できるため、この支持端にはモーメントは働かず、支持反力のみが働きます。

一方、固定端では水平方向と回転方向の移動が固定されているため、支持反力に加えて固定モーメントも作用します。

支持反力と固定モーメント

ここで、モーメントと力の正方向について次のように約束しておきます。

力と回転の正方向

材料力学では、力と回転の正方向を次の方向に定める。

鉛直下向き水平右向き時計回り

曲げモーメントと反力の正方向

力学では鉛直上向き、反時計回りを正の方向と約束しますが、材料力学では、鉛直下向き、時計回りを正方向と約束することが一般的です。(教科書により正方向が異なる場合もあります。)

→モーメントとは?

もちろん、標準的な約束に従っても問題は解けますが、材料は下方向に変形することが普通なので、下に変形する方向を正として約束するのが標準的です。

今後、材料力学の問題を扱うときは、正方向をこの方向とすることを暗黙の了解とします。

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自由体図とは?

梁の曲げを考えるとき、最初に自由体図と呼ばれる図を描き、力やモーメントを書き出します。

自由体図とは、物体の一部分を仮想的に切り離して考えた図のことです。

なお、自由体図を切り出した仮想的な断面のことを仮想切断面と呼びます。

自由体図の具体例を見ていきましょう。

例として、長さ$l$のはりの自由端に、大きさ$P$の集中荷重が働いている片持ち梁を考えます。(→片持ち梁とは?

集中荷重を受ける片持ち梁

自由体図を作るときのポイントは、なるべく拘束の少ない端を含むようにすることです。

なぜなら、拘束がある箇所では未知の反力や曲げモーメントが存在するために煩雑な計算が必要となるためです。

今回の場合は左端が自由端なので、左端が含まれるように自由体図を作成します。

すなわち、左端から$x$だけ離れた位置で仮想的に切断した自由体図を作ることができます。

作用する全ての力とモーメントを書き出すと自由体図は完成し、図のような自由体図が得られます。(材料力学では重力は基本的に考えません)

仮想切断面に働くせん断力と曲げモーメント

問題になるのは、仮想切断面(位置$x$)での反力$R(x)や$曲げモーメント$M(x)$の向きを決定することです。

このことについては次の章で考えます。

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未知のせん断応力と曲げモーメントの設定方法

自由体図を考えるとき、仮想切断面での反力と曲げモーメントの向きが大切になります。

とは言え、反力が上向きなのか下向きなのか、曲げモーメントの向きが時計周りか反時計周りなのか分からないので、適当に反力や曲げモーメントの方向を仮定する必要があります。

ただ、本当に適当に設定すると訳が分からなくなるので、一貫した基準に則り、反力と曲げモーメントの方向を設定します。

その基準とは、『はりが下向き($y$軸正)にたわむ向きに反力と曲げモーメントを仮定する』というものです。

自由体図を作図するときのポイント

仮想切断面に作用する反力と曲げモーメントは、はりが下向き($y$軸正)にたわむ向きに反力と曲げモーメントを仮定する。

このように設定したとしても、きちんとした計算結果が導けるので安心してください。

今回の場合、反力と曲げモーメントは次のように計算できます。

【解法】

自由体は静止しているため、力とモーメントは釣り合っており、釣り合い条件から以下の式が成立する。

$$
\left\{
\begin{split}
\,\, &P+R(x) =0\EE\\
\,\, &-Px +(-M(x) ) = 0
\end{split}
\right.
$$

これより、$R(x) = -P$、$M(x) = -Px$ と求められる。

このように、仮想切断面での仮定に関わらず、きちんとした計算結果が求められることが分かります。

なお、符号は座標系の正負と一致しています。

参考記事

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せん断力線図と曲げモーメント線図

準備が整ったので、今回の本題であるせん断力線図曲げモーメント線図の話題に取り掛かれます。(→せん断力とは?

せん断力線図とは、梁の断面に働くせん断力をグラフ化した図のことです。

せん断力線図を見ることで、どこでせん断が最大になるかが一目で分かるようになります。

曲げモーメント線図とは、梁の断面に働く曲げモーメントをグラフ化した図のことです。

曲げモーメント線図を見ることで、梁がどこで一番たわむのかを予想できるようになります。

それでは、例題を通してせん断力線図曲げモーメント線図を見ていきましょう。

片持ち梁の仮想切断面に働くせん断力と曲げモーメントは、先程計算した通り、

$$
\left\{
\begin{split}
\,\, &R(x) = -P \EE\\
\,\, &M(x) = -Px
\end{split}
\right.
$$

であるため、せん断力線図と曲げモーメント線図は次のように描けます。

片持ち梁のせん断力線図と曲げモーメント線図

グラフから分かるように、せん断力は片持ち梁の度の断面でも一定である一方、曲げモーメントは固定端において最大となることが分かります。

次に、単純支持梁でのせん断力線図と曲げモーメント線図を考えます。

この片持ち梁の仮想切断面には、次のようなせん断力と曲げモーメントが作用することが計算できます。

詳細な計算過程はこちらで解説しています。

$$
R(x)=\left\{
\begin{split}
&\ff{Pb}{l}\,\, \qquad\qquad\,\, (0 \leq x \leq a) \EE \EE
&-\ff{Pa}{l}\,\,\qquad\quad (a \leq x \leq l)
\end{split} \right.
$$

$$
M(x)=\left\{
\begin{eqnarray}
&\ff{Pb}{l}&x\,\,\,\,\, &(0 \leq x \leq a) \EE \EE
&\ff{Pa}{l}&\left( l \,-\, x \right)\,\,\,\, &(a \leq x \leq l)
\end{eqnarray} \right.
$$

単純支持梁のせん断力線図と曲げモーメント線図

せん断力線図や曲げモーメント線図を描けるようになると、梁の曲げについての問題もスムーズに解けるようになります。

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