平面ひずみ問題と平面応力問題|三次元問題の二次元問題への近似

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三次元の弾性体に作用する応力の状態やひずみ変形は複雑です。

その様子はナビエの方程式三次元主応力を解説した際にも紹介した通りです。

三次元の応力状態やひずみは複雑であり、正確に計算することは難しいという問題があります。

そのため、簡単に計算できる二次元の状態に問題を近似することが重要になります。

今回はその手法として良く用いられる平面ひずみ平面応力について解説します。

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平面ひずみ状態

はじめに、平面ひずみ状態と呼ばれる状況について考えます。

まず、$x,y$軸方向に対して$z$軸方向に非常に長い直方体形状をした弾性体を考えます。

平面ひずみ

この弾性を変形させ、各面に$u_x, u_y, u_z$の変位が生じたとします。

さて、最初に仮定した通りに$z$軸方向に非常に長い弾性体では、$z$軸に垂直な平面は、平面の状態を保つと考えられます。

このような変形状態を平面ひずみ状態と呼びます。

$z$軸に垂直な面が平面状態を保つことから、$u_z=0$であると言えます。($z$軸方向に変形しないように拘束した状態とも言えます)

$u_x, u_y$の変位に関しては$x,y$のみの関数として表せるため、$u_x = u_x(x,y), u_y = u_y(x,y)$と書くことができます。

ポイントは、$u_x$と$u_y$の関数に$z$が含まれないことです。

以上より、平面ひずみ状態でのひずみをひずみの定義式から計算すると、次のような式が成立するのです。

$$
\left\{
\begin{split}
&\varepsilon_{xx} = \ff{\del u_x}{\del x} \EE
&\varepsilon_{yy} = \ff{\del u_y}{\del y} \EE
&\varepsilon_{zz} = \ff{\del u_z}{\del z} = 0 \EE
&\varepsilon_{xy} = \varepsilon_{yx} = \ff{1}{2}\left(\ff{\del u_x}{\del y} + \ff{\del u_y}{\del x} \right) \EE
&\varepsilon_{yz} = \varepsilon_{zy} = \varepsilon_{zx} = \varepsilon_{xz} =0
\end{split}
\right.
$$

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平面ひずみ問題

平面ひずみ状態での変位とひずみの関係式を、一般化フックの法則に代入すると、次のように応力はひずみを使って次のように導けます。($\sigma_{xx} = \sigma_x, \sigma_{yy} = \sigma_y$と表しています)

$$
\left\{
\begin{split}
\sigma_{x} &= \ff{E}{(1\,-2\nu)(1+\nu)}\Big\{ (1-\nu)\varepsilon_{xx} + \nu\varepsilon_{yy} \Big\} \EE\\
\sigma_{y} &= \ff{E}{(1\,-2\nu)(1+\nu)}\Big\{ \nu\varepsilon_{xx} + (1-\nu)\varepsilon_{yy} \Big\} \EE\\
\sigma_{z} &= \ff{\nu E}{(1\,-2\nu)(1+\nu)}(\varepsilon_{xx}+\varepsilon_{yy})=\nu(\sigma_{x}+\sigma_{y}) \EE\\
\tau_{xy} &= \ff{E}{2(1+\nu)}\varepsilon_{xy}
\end{split}
\right.
$$

ただし、$E$をヤング率、$\nu$(ニュー)をポアソン比とします。

実際に平面ひずみ問題の例題を解いてみましょう。

平面ひずみ問題

板の厚みが$1\,\RM{mm}$、縦$10\,\RM{mm}$、横$100\,\RM{mm}$の鉄板(ヤング率:$206\, \RM{GPa}$、ポアソン比$0.3$)があったとします。

この板の左右に$100 \,\RM{N}$で引張り力を作用させたとします。

このとき、$\sigma_{y} = 0$であり、$\sigma_{x}=10\,\RM{MPa}$であることに注意して$\sigma_{z}$の計算を行うと、

\begin{split}
\sigma_{z} &= \nu(\sigma_{x}+\sigma_{y}) \EE
&= 0.3(10+0) = 3\, \RM{MPa}
\end{split}

と求められます。

したがって、$\varepsilon_{xx}, \varepsilon_{yy}$は、

\begin{split}
\varepsilon_{xx} &= \ff{1}{E}(\sigma_{xx}\,-\nu \sigma_{zz}) \EE
&= 4.42\times 10^{-5} \EE
\varepsilon_{yy} &= -\ff{\nu}{E}(\sigma_{xx}+ \sigma_{zz}) \EE
&= -1.89\times 10^{-5} \EE
\end{split}

と求められます。

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平面応力状態

次に、平面応力状態について考えます。

薄い平板に図のような応力が作用している状況を考えます。

平面応力状態

この場合、$\sigma_{x}, \sigma_{y}$ は$\sigma_{z}$より非常に大きいため、$\sigma_{z}$の大きさを近似的に$0$と見なすことができます。

このような状態を平面応力状態と呼びます。

平面応力状態の例として、薄肉円筒の応力状態が挙げられます。

薄肉円筒に働く応力の内、半径方向に作用する応力は、はフープ応力や軸線方向に作用する応力に対して無視できるほど十分に小さいため、平面応力状態と近似できるのです。

薄肉円筒に作用する応力については、こちらで詳しく解説しています。

平面応力状態では、$\sigma_{z}=0$であることから、フックの法則より、ひずみは次のように表せます。

$$
\left\{
\begin{split}
&\varepsilon_{xx} = \ff{1}{E}( \sigma_{x}\,-\nu \sigma_{y} ) \EE\\
&\varepsilon_{yy} = \ff{1}{E}( \sigma_{y}\,-\nu \sigma_{x} ) \EE\\
&\gamma_{xy} = \ff{1}{G}\tau_{xy}
\end{split}
\right.
$$

応力については次のようになります。

$$
\left\{
\begin{split}
&\sigma_{x} = \ff{E}{1\,-\nu^2}( \varepsilon_{xx}+\nu \varepsilon_{yy} ) \EE\\
&\sigma_{y} = \ff{E}{1\,-\nu^2}( \varepsilon_{yy}+\nu \varepsilon_{xx} ) \EE\\
&\tau_{xy} = G\gamma_{xy}
\end{split}
\right.
$$

ただし、$G$は横弾性係数とします。

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平面応力問題

実際に平面応力問題の例題を解いていきましょう。

平面応力問題

厚さ$1\,\RM{mm}$で一辺$50\,\RM{mm}$の正方形の鉄板(ヤング率:$206\, \RM{GPa}$、ポアソン比$0.3$)に$100 \,\RM{N}$の引張力が作用している状況を考えます。

このとき、各辺には$2 \,\RM{MPa}$の応力が作用するため、各辺のひずみは、

\begin{split}
\varepsilon_{xx} &= \ff{1}{E}( \sigma_{xx}\,-\nu \sigma_{yy} ) \EE
&= 6.80\times10^{-6} \EE
\varepsilon_{yy} &= \ff{1}{E}( \sigma_{yy}\,-\nu \sigma_{xx} ) \EE
&= 6.80\times10^{-6}
\end{split}

と求められます。


次回は、適合条件式を導出し、そこからAiryの応力関数の導出を目指していきます。

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