この記事では、ベクトルの微分と積分について解説します。
※ この記事ではベクトルを太字で表します。ベクトルの表記に関しての詳しい解説はこちらでしています。
ベクトルの微分とは?
ベクトルの微分と言われると、何やら大層なことをするように聞こえますが、身構える必要なありません。
ベクトルの微分は、通常の微分の延長線上にあって、次のように計算されます。
ただし、ベクトルの各成分を $A_x, A_y, A_z$ とし、$\B{i}, \B{j}, \B{k}$ を単位ベクトルとします。
ベクトルの微分の様子を図示するとこのようになります。
ベクトルの微分のポイントは、微分の結果もベクトルとなることです。
ベクトルの微分の計算例を見ていきます。
例えば、$\bold{A} = (t^2 + 2, 2t + 5, \sin t)$であるとき、$\DL{\frac{\diff \bold{A}}{\diff t}}$ は次のようになります。
\begin{eqnarray}
\frac{\diff \bold{A}}{\diff t} = 2t\bold{i} + 2\bold{j} + \cos t \bold{k}
\end{eqnarray}
となります。
ベクトルの微分の性質
任意のベクトル関数$\bold{A}, \bold{B}$と普通の関数(スカラー関数)$f$について、次の演算法則が成り立ちます。
これらの性質にて、内積と外積が使われています。
ベクトルの積分とは?
次は、ベクトルの積分について解説します。
ベクトルの積分も、ベクトルの微分と同様に考えることができます。
さて、ベクトルの積分は、ベクトル関数$\bold{A}(u)$とベクトル関数$\bold{D}(u)$を用いて次のように定義されます。
なお、この定義ではベクトルの不定積分を表します。
ベクトル$\bold{A}$が、$\bold{A}=A_x\bold{i}+A_y\bold{j} + A_z\bold{k}$と表せるとき、
ベクトルの積分は次のようにも表せます。
\begin{eqnarray}
\int \bold{A}(u)\diff u = \int A_x\diff u \,\bold{i} + \int A_y\diff u\, \bold{j} + \int A_z\diff u\, \bold{k}
\end{eqnarray}
また、$u=a$から$u=b$までのベクトルの定積分は次のようになります。
\begin{eqnarray}
\int_a^b \bold{A}(u)\diff u = \int_a^b A_x\diff u \,\bold{i} + \int _a^b A_y\diff u\, \bold{j} + \int _a^b A_z\diff u\, \bold{k}
\end{eqnarray}
ベクトルの積分の具体例を以下に示します。
$\bold{A} = (t^2 + 2, 2t + 5, \sin t)$であるとき、不定積分 $\DL{\int \bold{A}(t)\diff t}$は次のように計算できます。
\begin{eqnarray}
\int \bold{A}(t)\diff t &=& \int (t^2+2)\diff t \,\bold{i} + \int ( 2t + 5 )\diff t\, \bold{j} + \int \sin t \diff t\, \bold{k} \\
&=& \left( \frac{1}{3}t^3 +2t + C_1\right)\bold{i} + \left( t^2 +5t + C_2\right) \bold{j} +(-\cos t + C_3) \bold{k}
\end{eqnarray}
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