熱通過率・総括熱抵抗とは?|定義と定常状態の平板の例題

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流体中に置かれた平板の伝熱は、熱伝達熱伝導が複雑に関与する現象です。

このような状態での温度分布を求める王道の方法は、熱伝導方程式を解くことですが、平板が定常熱伝導である場合には簡単な方法で温度分布を求めることができます。

この際に用いられるのが、熱通過率総括熱抵抗と呼ばれる物理量です。

熱通過率とは?

平板の厚さを $L$、熱伝導率を $k$、熱伝達率を $h_H, h_L$ として、熱通過率を次のように定義する。

\begin{split}
\ff{1}{K} = \DL{\ff{1}{h_H}+\ff{L}{k}+\ff{1}{h_L}} \\
\,
\end{split}

総括熱抵抗とは?

平板の厚さを $L$、伝熱面積を $A$、熱伝導率を $k$ とし、熱伝達率を $h_H, h_L$ とする。

このとき、熱抵抗の総和を総括熱抵抗と呼び、次のように計算される。

\begin{split}
R_t = \ff{1}{A}\left( \ff{1}{h_H}+\ff{L}{k}+\ff{1}{h_L}\right) \\
\,
\end{split}

今回は熱通過率総括熱抵抗について解説し、これらを活用した、平板の温度分布を求める例についても解説します。

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熱通過率とは?

空気や水のような流体中に置かれた平板の伝熱の様子は、熱伝達熱伝導が複合的に関与する複雑な現象です。今回は、このときの伝熱の様子について考えていきます。

図のように、左側と右側の流体の温度をそれぞれ $T_H,T_L$ とします。また、$x=0$ での壁面の温度を $T_0$ とし、$x=L$ での壁面の温度を $T_1$ とします。

熱通過率とは

平板が定常熱伝導の状態にあるとすると、各部分を通過する熱流束はどの位置でも等しくなります。これより、熱流束の大きさを $q$ として、以下の等式が成立することが分かります。

$$
\left\{
\begin{split}
\,q&=-h_H(T_0-T_H) \EE
\,q&=k\ff{T_0-T_1}{L} \EE
\,q&=h_L(T_1-T_L) \EE
\end{split}
\right.
$$

各式を連立させ $T_0, T_1$ を消去すると、次の様になります。

\begin{split}
q = \ff{T_H-T_L}{\DL{\ff{1}{h_H}+\ff{L}{k}+\ff{1}{h_L}}}
\end{split}

ここで、熱通過率 $K$ $\RM{[W/(m^2\,K)]}$ なる新たな定数を導入し、

\begin{split}
\ff{1}{K} = \DL{\ff{1}{h_H}+\ff{L}{k}+\ff{1}{h_L}}
\end{split}

と定義します。

すると、平板を通過する熱流束を

\begin{split}
q = K(T_H-T_L)
\end{split}

と簡略化できます。

熱通過率とは?

平板の厚さを $L$、熱伝導率を $k$、熱伝達率を $h_H, h_L$ として、熱通過率を次のように定義する。

\begin{split}
\ff{1}{K} = \DL{\ff{1}{h_H}+\ff{L}{k}+\ff{1}{h_L}} \\
\,
\end{split}

熱通過率は流体が隔壁を通して熱交換するような機械の性能指標となる、重要な数値です。例えば、ラジエータなどの性能指標として使われます。

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総括熱抵抗とは?

前述の議論より、伝熱面積が $A$ の平板を通過する伝熱量 $\dot{Q}$ は、熱通過率を用いて次のように計算できると言えます。

\begin{split}
\dot{Q} = Aq = KA(T_H-T_L)
\end{split}

これを書き下すと、

\begin{split}
\dot{Q} = \ff{T_H-T_L}{\DL{\ff{1}{KA}}} =\ff{T_H-T_L}{\DL{ \ff{1}{A}\left( \ff{1}{h_H}+\ff{L}{k}+\ff{1}{h_L}\right)} }
\end{split}

とできます。これを熱抵抗の定義式と比較すると、全体の熱抵抗 $R_t$ を次のように求めることができます。

\begin{split}
R_t = \ff{1}{A}\left( \ff{1}{h_H}+\ff{L}{k}+\ff{1}{h_L}\right)
\end{split}

※ この式より、熱伝達の熱抵抗を熱伝達率の逆数として表せることも分かります。

$R_t$ は熱抵抗の総和であるため、これを総括熱抵抗と呼びます。なお、総括熱抵抗は直列に重ねられた多層平板の熱抵抗と同様の形をしていることも分かります。

総括熱抵抗とは?

平板の厚さを $L$、伝熱面積を $A$、熱伝導率を $k$ とする。また、熱伝達率を $h_H, h_L$ とする。

このとき、熱抵抗の総和を総括熱抵抗と呼び、次のように計算される。

\begin{split}
R_t = \ff{1}{A}\left( \ff{1}{h_H}+\ff{L}{k}+\ff{1}{h_L}\right) \\
\,
\end{split}

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総括熱抵抗を利用した平板の温度分布の計算

今回学んだ総括熱抵抗を利用して、平板の温度分布を導いてみましょう。

なお、温度分布の様子自体は以前、平板の定常熱伝導で考えましたが、今回は熱伝導に加えて熱伝達も考えていることがポイントとなります。

さて、平板内の左端から $x$ の位置での温度を $T(x)$ として、このポイントを通過する熱流束の大きさを $q(x)$ とします。

このとき、フーリエの法則より $q(x)$ を次のように計算できます。

\begin{split}
q(x) = -k\ff{\del\,T(x)}{\del x}
\end{split}

今、平板は定常熱伝導の状態にあるとすると、$q(x)$ を以下のようにできることはこちらで導きました。

\begin{split}
q(x) = k\ff{T_0-T_1}{L}
\end{split}

最初にも言及しましたが、今回は定常熱伝導の状態での平板を考えているため、どのポイントでも熱流束の大きさが一定であることがポイントになります。

したがって、$L$ を $x$、$T_1$ を $T(x)$ と読み替えることができて、

\begin{split}
q(x) = k\ff{T_0-T(x)}{x}
\end{split}

とできます。さらに、壁面での熱伝達による熱流束も等しいため、以下の等式が成立します。

\begin{split}
q=-h_H(T_0-T_H) = k\ff{T_0-T(x)}{x}
\end{split}

一連の等式から $T_0$ を消去すると、

\begin{split}
T_H-T(x)=\left( \ff{1}{h_H}+\ff{x}{k} \right)q
\end{split}

とできます。ここで、第$1$節で導出した熱通過率と熱流束の関係を利用すると、さらに変形でき、

\begin{split}
T_H-T(x)=\left( \ff{1}{h_H}+\ff{x}{k} \right)K(T_H-T_L)
\end{split}

これより、

\begin{split}
T(x)=T_H-\left( \ff{1}{h_H}+\ff{x}{k} \right)\ff{T_H-T_L}{\DL{ \ff{1}{h_H}+\ff{L}{k}+\ff{1}{h_L} }}
\end{split}

と温度分布を導けます。熱伝導方程式を解くことなく平板の温度分布を導けました。

この結果を活用することで、フィンのような放熱装置の効率を計算できるようになります。

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