等角写像とは次のような変換のことを言います。
等角写像の簡単なイメージと、等角写像が成立するための条件についても解説します。
等角写像のイメージ
等角写像について解説する前に、等角写像の簡単なイメージについて紹介します。
等角写像の例として次のようなものがあります。
様子をよく見ると、変形の前後で交点での角度が変化せず、直角を保っていることが分かります。
このように、$z$ 平面上での角度が保存されたまま $w$ 平面上に移されるような操作を等角写像と呼びます。文字通り、角度が保たれるため等角写像と呼ばれるのです。
今回は $f(z)=z^2$ という関数を使いましたが、違う関数を使うと異なる結果になります。次に、等角写像の数学的な性質について考えていきましょう。
等角写像と微分
等角写像を数学的に記述する方法について考えます。
$z$ 平面上の領域 $D$ 内での複素関数を $z(t)$ とし、等角写像により $w$ 平面上の領域 $D’$ 内の $f(z(t))$ に写されたとします。
さて、$D$ 内の曲線を $C$ として次のようにパラメータ表示します。
\begin{split}
C:z(t)=x(t)+iy(t)\,\,\,(a\leq t\leq b)
\end{split}
ただし、$a,b,t$ を実数、$x,y$ を実関数とします。
$C$ が $f(z(t))$ によって変換された結果、$w$ 平面上の $\Gamma$(ガンマ)という曲線になったとすると、その曲線は次のように表せます。
\begin{split}
\Gamma:w=f(z)=f(x(t)+iy(t))\,\,\,(a\leq t\leq b)
\end{split}
このとき、『 $\Gamma$ は $f$ による $C$ の像』と言います。
今、2つの曲線を $C_1,C_2$ とし、これらの像を $\Gamma_1,\Gamma_2$ とすると、等角写像後の様子は次のように表せます。
今、$C_1$ と $C_2$ の交点を $z_0$、$\Gamma_1$ と $\Gamma_2$ の交点を $w_0$ とし、その近傍の点を $z_1, z_2, w_1, w_2$ とます。なお、各点は $C_1,C_2,\Gamma_1,\Gamma_2$ 上にあるとします。
まず、次の式について考えてみましょう。
\begin{split}
\D w_1 = w_1-w_0
\end{split}
$w$ の定義より、
\begin{split}
\D w_1 = f(z_1)-f(z_0)
\end{split}
と表せ、次のような変形を行います。
\begin{split}
\D w_1 = \ff{f(z_1)-f(z_0)}{z_1-z_0}(z_1-z_0)
\end{split}
見通しを良くするため、$z_1-z_0=\D z_1$ とすると、
\begin{eqnarray}
\ff{w_1-w_0}{z_1-z_0} = \ff{f(z_0+\D z_1)-f(z_0)}{\D z_1} \tag{1}
\end{eqnarray}
とできます。同様にして $w_2-w_0$ についても
\begin{eqnarray}
\ff{w_2-w_0}{z_2-z_0} = \ff{f(z_0+\D z_2)-f(z_0)}{\D z_2} \tag{2}
\end{eqnarray}
とできます。
等角写像の成立条件
ここからが重要です。式(1)と(2)より以下の式を導くことができます。
\begin{eqnarray}
\ff{\DL{\ff{w_1-w_0}{z_1-z_0}}}{\DL{\ff{w_2-w_0}{z_2-z_0}}} = \ff{\DL{\ff{w_1-w_0}{w_2-w_0}}}{\DL{\ff{z_1-z_0}{z_2-z_0}}}=\ff{\DL{\ff{f(z_0+\D z_1)-f(z_0)}{\D z_1}}}{\DL{\ff{f(z_0+\D z_2)-f(z_0)}{\D z_2}}}\tag{3}
\end{eqnarray}
さて、$f(z)$ が正則であるとすると、$\DL{\lim_{\D z\to 0}\ff{f(z+\D z)-f(z)}{\D z}}$ は収束して、$f'(z)$ と書けます。
したがって、$\D z_1\to 0, \D z_2\to 0$ の極限を考えると、
\begin{eqnarray}
\ff{w_1-w_0}{w_2-w_0}=\ff{z_1-z_0}{z_2-z_0} = \ff{f'(z_0)}{f'(z_0)}
\end{eqnarray}
とでき、$f'(z_0)\neq0$ であれば、
\begin{eqnarray}
\ff{w_1-w_0}{w_2-w_0}=\ff{z_1-z_0}{z_2-z_0}
\end{eqnarray}
とすることができます。
ここで合成変換の理論を思い出すと、$w_0$ を中心とした回転角と $z_0$ を中心とした回転角が一致し、その回転方向も一致することを表していることが分かります。
つまり、$\angle w_1w_0w_2=\angle z_1z_0z_2$ となることが分かります。以上より、等角写像を行うための条件が次のようにまとめられます。
等角写像の例
等角写像の例を解説します。
$(1)$ $w=z^4$ の等角写像
$f(z)=z^4$ は複素平面全体で正則であり、$z=0$ 意外で $f'(z)\neq0$ です。そのため、等角写像が実行できることが分かります。
さて、$z=re^{i\q}, w=u+iv$ とすると、$u=r^4\cos4\q, v=r^4\sin4\q$ という対応関係を導け、$r=1,2,3,4$ に対して等角写像の結果をプロットすると次のようになります。
図のように、$z$ 平面上の縦横の線は $w$ 平面上にて放物線状に変形されていることが分かります。
また、交角は直角を保っていることが分かります。