二重振り子の周期の導出|解析力学による二重振り子の解析

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前回は振り子のひもの長さを周期的に変化させた場合の運動を解析し、マシュー方程式と呼ばれる微分方程式の導出を行いました。

今回は二重振り子と呼ばれる対象を解析力学を用いて解析していきます。

さて、二重振り子自体はシンプルな構造をしているのですが、初期位置によっては、非常に複雑かつ非周期的なカオスと呼ばれる運動になるという興味深い性質を持ちます。(カオスについては力学系という分野で改めて取り上げます)

なお、特別な場合では、二重振り子の振れ角と周期が次のように表せることが知られています。

二重振り子の振れ角

二重振り子の錘の質量と紐の長さをそれぞれ、$m,l$ とする。
二重振り子の振幅が微小なとき、各錘の振れ角 $\q_1,\q_2$ は以下のように表せる。

$$
\left\{
\begin{split}
&\q_1=\ff{1}{2}\Big\{A_1\cos(\omega_1 t+\phi_1)+A_2\cos(\omega_2 t+\phi_2) \Big\} \\[8pt]
&\q_2=\ff{1}{\sqrt{2}}\Big\{A_1\cos(\omega_1 t+\phi_1)-A_2\cos(\omega_2 t+\phi_2) \Big\}
\end{split}
\right.
$$

 

二重振り子の周期

二重振り子の錘の質量と紐の長さをそれぞれ、$m,l$ とする。
二重振り子の振幅が微小なとき、各錘の周期 $\omega_1,\omega_2$ は以下のように表せる。

$$
\left\{
\begin{split}
&\omega_1= \sqrt{\ff{\sqrt{2}}{\sqrt{2}+1}}\sqrt{\ff{g}{l}} \\[8pt]
&\omega_2= \sqrt{\ff{\sqrt{2}}{\sqrt{2}-1}}\sqrt{\ff{g}{l}}
\end{split}
\right.
$$

 

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二重振り子とは?

単振り子の先にさらにもう一つの錘を連結した振り子のことを二重振り子と呼びます。

二重振り子の模式図

二重振り子の運動は初期条件によっては、単振り子の運動と異なって非常に複雑で非周期的な運動(=カオス)を行います。

ところで、二重振り子の各錘の質量をそれぞれ $m_1,m_2$ として、ひもの長さを $l_1,l_2$ とします。そして、各振り子の位置を鉛直線からの角度で指定し、それぞれの角度を $\q_1,\q_2$ で表すこととします。

また、二重振り子の運動が $2$ 次元平面に限定されているとすると、その自由度は最大で $4$ となります。なお、今回はひもの長さが決まっているため、ホロノミックな束縛もあると言えます。

今回、この系のホロノミックな束縛は $2$ つです。したがって、二重振り子の自由度は $2$ と言えます。

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二重振り子のラグランジアン

二重振り子には保存力である重力のみが作用しています。したがって、オイラー・ラグランジュ方程式を利用して運動方程式を導出するのが便利です。

そこで、まずは二重振り子ラグランジアンを求めることから始めましょう。

今、それぞれの錘の角速度はそれぞれ $\dot{\q_1},\dot{\q_1}+\dot{\q_2}$ と表せるので、二重振り子全体の運動エネルギー $T$ を、

\begin{split}
T&=\ff{1}{2}m_1l_1^2\dot{\q}_1^2+\ff{1}{2}m_2l_2^2(\dot{\q}_1+\dot{\q}_2)^2
\end{split}

とできます。

そして、ポテンシャルエネルギー $U$ は次のように表せます。

\begin{split}
U&=-m_1g\big\{l_1-l_1(1-\cos\q_1)\big\}\EE
&\qquad-m_2g\big\{(l_1+l_2)-l_1(1-\cos\q_1)\EE
&\qquad\quad-l_2(1-\cos\q_2) \big\}
\end{split}

$\q$ が微小のとき、マクローリン展開を用いて $\DL{\cos\q\NEQ 1-\ff{1}{2}\q^2}$ と近似できるので、上式を

\begin{split}
U&=-m_1gl_1\left(1-\ff{1}{2}\q_1^2 \right)\EE
&\qquad-m_2g\left\{ l_1\left(1-\ff{1}{2}\q_1^2\right)+l_2\left(1-\ff{1}{2}\q_2^2\right) \right\}
\end{split}

と整理できます。以上よりラグランジアン

\begin{split}
L&=\ff{1}{2}m_1l_1^2\dot{\q}_1^2+\ff{1}{2}m_2l_2^2(\dot{\q}_1+\dot{\q}_2)^2+m_1gl_1\left(1-\ff{1}{2}\q_1^2 \right) \EE
&\qquad+m_2g\left\{ l_1\left(1-\ff{1}{2}\q_1^2\right)+l_2\left(1-\ff{1}{2}\q_2^2\right) \right\}
\end{split}

と求められます。

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二重振り子の運動方程式

上で求めたラグランジアンより二重振り子の運動方程式を導出していきましょう。先程説明したように、二重振り子の自由度は $2$ です。したがって、$\q_1,\q_2$ に関する運動方程式が $2$ つ存在することが分かります。

まず、$\q_1$ に関する運動方程式についてですが、オイラー・ラグランジュ方程式の第一項については、

\begin{split}
\ff{\diff}{\diff t}\left( \ff{\del L}{\del \dot{\q}_1} \right)&= \ff{\diff}{\diff t}\left\{ m_1l_1^2\dot{\q}_1+m_2l_2^2(\dot{\q}_1+\dot{\q}_2) \right\} \EE
&=m_1l_1^2\ddot{\q}_1+m_2l_2^2(\ddot{\q}_1+\ddot{\q}_2)
\end{split}

となります。

オイラー・ラグランジュ方程式の計算では $q$ と $\dot{q}$ を独立変数と見なします。したがって、$\DL{\ff{\del L}{\del \dot{\q}_1}}$ の計算では $\dot{\q}_1$ のみに対して微分を行います。

そして、第二項については

\begin{split}
\ff{\del L}{\del {\q}_1} &= -(m_1l_1+m_2l_2)g\q_1
\end{split}

となります。以上より、$\q_1$ に関する運動方程式は次のようになります。

\begin{eqnarray}
(m_1l_1^2+m_2l_2^2)\ddot{\q}_1+m_2l_2^2\ddot{\q}_2+(m_1l_1+m_2l_2)g\q_1=0\tag{1}
\end{eqnarray}

同様にして、$\q_2$ に関する運動方程式は以下のようになります。

\begin{eqnarray}
\ddot{\q}_1+\ddot{\q}_2+\ff{g}{l_2}\q_2=0\tag{2}
\end{eqnarray}

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二重振り子の解法と振れ角の導出

導出した二重振り子の運動方程式 $(1),(2)$ の連立微分方程式を解くのは困難ですが、$m=m_1=m_2, l=l_1=l_2$ とした場合は比較的簡単に厳密解が得られます。

実際に変数を入れ替えて整理すると、以下の連立微分方程式が得られます。

$$
\left\{
\begin{split}
2\ddot{\q}_1+\ddot{\q}_2+\ff{2g}{l}\q_1&=0\qquad(3)\EE
\ddot{\q}_1+\ddot{\q}_2+\ff{g}{l}\q_2&=0\qquad(4)
\end{split}
\right.
$$

$(3),(4)$ を上手く変形して $\ddot{\Theta}-\A\Theta=0$ のような形に持ち込むことができれば、振り子の微分方程式の計算結果を用いることができます。

これを目標に変形を行っていきましょう。初めに $k$ を定数として $(3)\times k+(4)$ を計算すると、

\begin{eqnarray}
(2k+1)\ddot{\q}_1+(k+1)\ddot{\q}_2=-\ff{g}{l}\left( 2k\q_1+\q_2 \right)\tag{5}
\end{eqnarray}

これを整理すると、

\begin{eqnarray}
\ff{\diff^2}{\diff t^2}\left(\ff{2k+1}{k+1}\q_1+\q_2 \right)=-\A\left( 2k\q_1+\q_2 \right)
\end{eqnarray}

とできますます。ただし、$\DL{\A=\ff{g}{l(k+1)}}$ とします。さて、$\ddot{\Theta}-\A\Theta=0$ の形に持ち込むことを目標としているので、$\DL{\ff{2k+1}{k+1}=2k}$ となれば良く、この等式を計算すると、

\begin{eqnarray}
k=\pm\ff{1}{\sqrt{2}}
\end{eqnarray}

が得られます。

まず、$k=\DL{\ff{1}{\sqrt{2}}}$ を $(5)$ に代入して整理すると、

\begin{split}
&\left( 1+\ff{1}{\sqrt{2}} \right)\left(\ff{2}{\sqrt{2}}\ddot{\q}_1+\ddot{\q}_2 \right)=-\A\left(\ff{2}{\sqrt{2}}{\q}_1+{\q}_2 \right) \EE
&\,\,\,\quad\therefore\sqrt{2}\ddot{\q}_1+\ddot{\q}_2=(2-\sqrt{2})\A\left(\ff{2}{\sqrt{2}}{\q}_1+{\q}_2 \right)
\end{split}

これより、

\begin{eqnarray}
{\q}_1+\ff{1}{\sqrt{2}}{\q}_2 = A_1\cos(\omega_1 t+\phi_1)\tag{6}
\end{eqnarray}

が得られます。

$k=\DL{-\ff{1}{\sqrt{2}}}$ に対しても同様に計算すると、

\begin{eqnarray}
{\q}_1-\ff{1}{\sqrt{2}}{\q}_2 = A_2\cos(\omega_2 t+\phi_2)\tag{7}
\end{eqnarray}

となります。$(6),(7)$ を上手く整理することで、$\q_1,\q_2$ を

$$
\left\{
\begin{split}
&\q_1=\ff{1}{2}\Big\{A_1\cos(\omega_1 t+\phi_1)+A_2\cos(\omega_2 t+\phi_2) \Big\} \\[8pt]
&\q_2=\ff{1}{\sqrt{2}}\Big\{A_1\cos(\omega_1 t+\phi_1)-A_2\cos(\omega_2 t+\phi_2) \Big\}
\end{split}
\right.
$$

と求められます。

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