ホロノミックな束縛とは?|束縛条件と自由度

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ある系に対して運動方程式を立てるとき、何本の運動方程式が必要となるのかを事前に見積もれると、非常に便利です。

さて、系の運動を決める際に必要となるパラメータの個数を物理学の世界では自由度と呼びます。

自由度とは?

物体の位置を決めるために必要な独立変数の数を自由度と呼ぶ。

すなわち、$n$ 次元空間上に存在する $m$ 個の質点が $l$ 個のホロノミックな束縛を受けているとき、
その系の自由度 $f$ は以下のようになる。

\begin{eqnarray}
f=n\times m-l\\
\,
\end{eqnarray}

なお、自由度に大きな関わりを持つのがホロノミックな束縛です。

ホロノミックな束縛とは?

物体間の位置関係を、座標間の方程式として表現できる条件のこと

今回は、解析力学の基礎である自由度ホロノミックな束縛について解説します。まずは、これらの前提知識となる、束縛条件という概念から説明を行っていきます。

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束縛条件とは?

基本的に物体は、それ単体で自由に運動しているのではなく、ひもや斜面などによって動きが制限された状態で運動をしています。物理学では、これらの制約条件を数学的に定式化して問題を解く必要があります。

さて、これらの制約条件は物体の運動を束縛するような条件であるため、これを束縛条件と呼びます。

束縛条件とは?

物体の運動を束縛するような条件のこと

質量 $M$ の物体が斜面で静止している状態を例での、束縛条件について考えてみましょう。

斜面と束縛条件

まず、物体から斜面に作用している荷重は $Mg$ となります。これに対して静止摩擦力 $f$ が作用しているので、物体は静止していられます。

問題となるのは $f$ の具体的な大きさです。$Mg$ は基本的には問題文中に書かれているので、前提条件無しに用いることができますが、$f$ については自力で求めるしかありません。このようなとき、$f$ を確定されるために束縛条件が活用されます。

今回の斜面の問題における束縛条件とは、『荷重により斜面が変形しない』ということです。

今までは特に疑問に思うことなく、斜面が変形しないことを受け入れていましたが、改めて考えるとこれが束縛条件であったことに気が付きます。

以上、物体が静止していることと、束縛条件の斜面が変形しないという条件から、斜面方向の物体の加速度は $0$ と言えます。したがって、物体の運動方程式

\begin{split}
m\cdot 0=-Mg\sin\q+f
\end{split}

とできて、したがって $f=mg\sin\q$ と求められます。なお、このように束縛条件から求められる力のことを束縛力と呼びます。

束縛力とは?

束縛条件から求められる力のことを束縛力と呼ぶ。

これは簡単な例ですが、束縛条件を上手に活用することで物体に作用する力が求められます。

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ホロノミックな束縛とは?

さて、『二つの質点の距離が一定』という束縛条件を考えてみましょう。状況としては、質点同士が棒に繋がれていると考えてください。

一定距離の束縛条件

ここでは、物体間の距離が変化しないことに着目します。今、それぞれの座標を $(x_i,x_j,x_k),(x’_i,x’_j,x’_k)$ とします。すると、三平方の定理から以下の関係式を導けます。

\begin{eqnarray}
l=\sqrt{(x_i-x’_i)^2+(x_j-x’_j)^2+(x_k-x’_k)^2}\tag{1}
\end{eqnarray}

このように、物体間の位置関係を座標間の方程式で表現できるような条件のことをホロノミックな束縛と呼びます。

ホロノミックな束縛とは?

物体間の位置関係を、座標間の方程式として表現できる条件のこと

さて、ホロノミックな束縛によりの変数達 $x$ の振る舞いはどう変わるでしょうか?

何の制約も無ければそれぞれの $x$ は任意の値を取ることができますが、『二つの質点の距離が一定』という今回の束縛条件が課されると、一つの $x$ は他の座標が決まると自動的に決定することとなります。

つまり、$x_i,x_j,x_k,x’_i,x’_j$ の5つが決まったとすると、上の条件から自動的に $x’_k$ の値が定まります。言い換えると、独立変数は $5$ つとなっています。

このように、ホロノミックな束縛条件が1つ増えるごとに独立変数 $x$ の数が1つずつ減っていくことが分かります。

非ホロノミックな束縛とは?

式$(1)$を変形して、

\begin{eqnarray}
\sqrt{(x_i-x’_i)^2+(x_j-x’_j)^2+(x_k-x’_k)^2}-l=0
\end{eqnarray}

と置くことにしましょう。すると、ホロノミックな束縛を $f(x_i,x_j,\cdots)=0$ のような関数の形として表現できていることが分かります。

一方で、

$$f(x_i,x_j,\cdots)<0,\quad f(x_i,x_j,\cdots)>0$$

のような不等式で表される条件も考えることができます。このような条件のことを非ホロノミックな束縛と呼びます。

非ホロノミックな束縛とは?

物体間の位置関係を、座標間の方程式として表せない条件のことを、非ホロノミックな束縛と呼ぶ。

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自由度とは?

上の例で見てきたことを一般化しましょう。

まず、ホロノミックな束縛が存在しなければ $n$ 次元空間上に存在する $m$ 個の質点の位置は、$n\times m$ 個の独立な変数を用いて記述できます。

ここに、ホロノミックな束縛が $l$ 個加わると、上の例から分かるように独立変数の数が $n\times m-l$ 個に変化します。

毎回、独立変数の数と呼ぶのは面倒なため、物理学の世界では独立変数の数のことを、自由度と呼ぶことにします。

自由度とは?

物体の位置を決めるために必要な独立変数の数を自由度と呼ぶ。

すなわち、$n$ 次元空間上に存在する $m$ 個の質点が $l$ 個のホロノミックな束縛を受けているとき、
その系の自由度 $f$ は以下のようになる。

\begin{eqnarray}
f=n\times m-l\\
\,
\end{eqnarray}

自由度の考え方は解析力学だけでなく、機械力学の分野でも活用されます。

また、自由度は独立変数の数のことなので、直交座標系以外の一般化座標にも適用できます。したがって、オイラー・ラグランジュ方程式の本数を見積もることにも使うことができます。

つまり、自由度が $f$ の系に対しては、独立なオイラー・ラグランジュ方程式の数が $f$ 個になることが言えます。

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