平板が流体から受ける力の計算|流体力学と運動量保存則の応用

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今回は流体の運動量と力の関係について解説していきます。

始めに、流体の運動量は次のように表されます。

流体の運動量

流体の密度を$\rho$、断面積を$S$、流速を$v$として流体の運動量は次のように表せる

\begin{split}
p = \rho S v^2 \\
\end{split}

また、質量流量を $Q$ として、運動量を次のようにも表せる。

\begin{split}
p = Qv \\
\,
\end{split}

なお、運動量と力積の関係を利用することで流体が物体に及ぼす力を計算できます。

流体が検査体積に及ぼす力

検査体積の入口の断面積を $S_1$、流速を $v_1$とし、
出口での断面積を $S_2$、流速を $v_2$とする。

このとき、検査体積に作用する力 $F$ の大きさは次のように求められる。

\begin{split}
F = \rho S_2 v_2^2-\rho S_1 v_1^2 \\
\,
\end{split}

今回は、平板とスプリンクラーを例題として、流体が及ぼす力について計算します。

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検査体積とは?

流体力学でも運動量保存則は成立します。このことについて見ていきましょう。

この節では導入として、運動量保存則が適用される舞台となる検査体積について解説します。

検査体積とはその名の通り、運動量の変化を考えるために設定した領域のことです。

検査体積とは?

運動量の変化を考える対象に対し、設定した領域のこと

なお、二次元の場合は検査面と呼ばれます。

図のような管路があり、その管路の一部分に対して運動量変化を考えるとき、点線部分が検査体積となります。

検査体積の模式図

検査体積に対しての運動量変化について考えていきましょう。

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検査体積と運動量保存則

次に、検査体積に出入りする運動量について考えましょう。

ただし、今回考える運動量は単位時間当たりの運動量であることに注意してください。

さて、流体の密度を $\rho$、流速を $v$、断面積を $S$ としましょう。

すると、単位時間当たりに流入(流出)する質量 $\dot{m}$ は次のように表せます。

\begin{split}
\dot{m}=\rho S v = Q
\end{split}

これは流量と一致するため、$\dot{m} = Q$ ともできます。

※ 上付きドットは時間微分を表します。表記法についてはこちらで詳しく解説しています。

さて、運動量を $p$ とすると、運動量の定義より次のように計算できます。

\begin{split}
p = \dot{m} v = \rho S v^2
\end{split}

流体の運動量

流体の密度を$\rho$、断面積を$S$、流速を$v$として流体の運動量は次のようになる

\begin{split}
p = \dot{m}v = \rho S v^2 \\
\end{split}

また、質量流量を $Q$ として、運動量を次のようにも表せる。

\begin{split}
p = Qv \\
\,
\end{split}

※ 上付きドットは時間微分を表します。詳しくはこちらで解説しています。

先述の検査体積の例に、運動量の計算を適用してみましょう。

検査体積の模式図

検査体積の入口の断面積を $S_1$、流速を $v_1$とし、出口での断面積を $S_2$、流速を $v_2$とします。

すると、検査体積内の正味の運動量の変化 $\D p$ を次のように計算できます。

\begin{split}
\D p = \rho S_2 v_2^2-\rho S_1 v_1^2
\end{split}

運動方程式の定義から分かるように、運動量の時間変化は力と結びつきます。

さらに、運動量の時間変化は力積と等しくなり、検査体積に作用する力を $F$ とすると、

\begin{split}
F \D t = \rho S_2 v_2^2-\rho S_1 v_1^2
\end{split}

という式が成立します。

今考えている運動量は単位時間当たり($\D t = 1$)の運動量であるため、

\begin{split}
F = \rho S_2 v_2^2-\rho S_1 v_1^2
\end{split}

となります。

流体が検査体積に及ぼす力

検査体積の入口の断面積を $S_1$、流速を $v_1$とし、
出口での断面積を $S_2$、流速を $v_2$とする。

このとき、検査体積に作用する力 $F$ の大きさは次のように求められる。

\begin{split}
F = \rho S_2 v_2^2-\rho S_1 v_1^2 \\
\,
\end{split}

この性質を利用して、流体から受ける力を計算できることを例題を通して確認しましょう。

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平板が流体から受ける力の計算

$\theta$(シータ)傾いた平板に噴流が衝突している状況を考えます。

このとき、平板が流体から受ける力を計算します。

なお、大気圧を $p_0$、流体の密度を $\rho$、噴流の流速を $v_0$ とし、体積流量を $Q_0$ とします。

平板が流体から受ける力

平板に平行方向に $x$ 軸、垂直方向に $y$ 軸をとります。

今回は平板が流体から受ける力を計算したいので、この範囲を含むように検査体積を設定します。(図中の点線)

さて、壁面に衝突した噴流は上下に分かれます。

なお、これらの噴流の流速・流量・圧力をそれぞれ $v_1, v_2, p_1, p_2, Q_1, Q_2$ とします。

今、流体が理想流体かつ定常流であるとすると、ベルヌーイの定理が成立し、

流線上に沿って次の関係式が成立します。

$$
\left\{
\begin{split}
p_0 + \ff{1}{2}\rho v_0^2 &= p_1+\ff{1}{2}\rho v_1^2 \EE\\
p_0 + \ff{1}{2}\rho v_0^2 &= p_2+\ff{1}{2}\rho v_2^2
\end{split}
\right.
$$

※ 高さ方向の変化は$0$と近似しています。

流体の静圧は一定であるため、$p_1 = p_2 = p_0$ であり、

これより $v_1 = v_2 = v_0$ であることを導けます。

以上より、$y$ 軸方向の運動量の変化 $\D p_y$ を次のように計算できます。

\begin{split}
\D p_y &= (Q_1v_1\sin\q+Q_2v_2\sin\q)-0 \EE
&= (Q_1+Q_2)v_0\sin\q
\end{split}

また、連続の式より $Q_1+Q_2 = Q_0$ の関係が成立します。

したがって、

\begin{split}
\D p_y &= Q_0v_0\sin\q
\end{split}

となります。

以上より力 $F$ を次のように求められます。

\begin{split}
F &= Q_0v_0\sin\q
\end{split}

このように、検査体積を通過する際、流体の$y$ 軸方向に関しての運動量が変化するため、平板に力が作用するのです。

平板が流体から受ける力

$\theta$(シータ)傾いた平板に噴流が衝突しているとき、
平板に作用する力 $F$ は次のように表せる。

\begin{split}
F &= Q_0v_0\sin\q
\end{split}

ただし、噴流の質量流量を $Q_0$、流速を $v_0$ とする。

また、流体の密度を $\rho$、断面積を $S$ とすると次のようにも表せる。

\begin{split}
F &= \rho S v_0^2 \sin\q \\
\,
\end{split}

次に、$Q_1$ と $Q_2$ を導くこと考えます。

$x$ 軸方向に関しては運動量保存則が成立することに注目し、それぞれの流量を導きます。

※ $x$ 軸方向に対しては外力が作用していないため、$x$ 軸方向に関しては運動量保存則が成立します。

具体的に $x$ 軸方向に関しての運動量を考えると、運動量保存則より次のような関係式が導けます。

\begin{eqnarray}
Q_0 v_0\cos \q &= Q_1v_1-Q_2v_2 \tag{1}
\end{eqnarray}

めでたく、速度に関しての変数を消去できました。

先述の結果より、$v_1 = v_2 = v_0$、$Q_1+Q_2 = Q_0$ であるため、上式は次のように整理でき、

\begin{split}
Q_0 v_0\cos \q &= Q_1v_0-Q_2v_0 \EE
&= Q_1v_0-(Q_0-Q_1)v_0 \\[5pt]
\therefore\,\,\, Q_1 &= \ff{1+\cos\q}{2}Q_0
\end{split}

$Q_1$ が導けます。

以上より、$Q_1, Q_2$ を次のように求められます。

$$
\left\{
\begin{split}
Q_1 &= \ff{1+\cos\q}{2}Q_0 \EE\\
Q_2 &= \ff{1-\cos\q}{2}Q_0
\end{split}
\right.
$$

平板に当たる噴流と流量

$\theta$(シータ)傾いた平板に流量 $Q_0$ 噴流が衝突しているとき、
上下に分かれた噴流の流量 $Q_1, Q_2$ は次のように表せる。

$$
\left\{
\begin{split}
Q_1 &= \ff{1+\cos\q}{2}Q_0 \EE\\
Q_2 &= \ff{1-\cos\q}{2}Q_0
\end{split}
\right.
$$

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スプリンクラーが流体から受けるトルクの計算

スプリンクラーが芝生に水を撒く様子を見たことはあるでしょうか?

散水中、スプリンクラーは回転していますが、実はモータにより回転させているのではなく、

スプリンクラーに流体が作用させた力により回転しているのです。

ということで、流体がスプリンクラーに与える受けるトルクについて計算していきましょう。

 

次のように、半径$r$ の円軌道を角速度 $\omega$(オメガ)でスプリンクラーが回転しているとします。

また、スプリンクラーの菅の内径を $d$、流入する流量を $Q$ とし、スプリンクラーの先端が $\q$ だけ折れ曲がっているとします。

スプリンクラーが流体から受ける力

さて、スプリンクラー全体を検査体積として考えると、スプリンクラー全体の角運動量の大きさ $T$ は次のように計算できます。

\begin{split}
T &= Q\cdot 0 + 2\times r\cdot \ff{1}{2}Q\sin \q\cdot r\omega \EE
\therefore\,\,\, T &= Qr^2\omega \sin \q
\end{split}

※ 接線方向の流量は $Q\sin \q$ とできます。

さて、接線方向の速度を $v$ とします。

すると、$v$ と $Q$ の間の関係式は連続の式より以下のように導けます。

\begin{split}
v &= \ff{\ff{Q}{2}}{\ff{\pi}{4}d^2} \EE
&= \ff{2 Q}{\pi d^2} = r\omega
\end{split}

今、$v=r\omega$ であるので、先程計算したトルクの大きさは次のように変形できます。

\begin{split}
T &= \ff{2Q^2 r}{\pi d^2} \sin \q
\end{split}

となります。

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