ナビエ・ストークス方程式の導出|非圧縮粘性流体の運動方程式とは?

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今回は、非圧縮粘性流体の運動を記述するナビエス・トークス方程式の導出過程について解説します。

ナビエ・ストークス方程式

流体の速度ベクトルを $\B{v}$、密度を$\rho$(ロー)、
圧力を$p$、動粘性度を$\nu$(ニュー)とする。
このとき、ナビエ・ストークス方程式は次のように記述される。

\begin{split}
\ff{\del \B{v}}{\del t} + (\B{v}\cdot \nabla)\B{v} = -\ff{1}{\rho}\nabla p +\nu\nabla^2 \B{v}+ \B{f}\\
\,
\end{split}

ただし、$\B{f}$ を体積力とする。

太字はベクトルを表し、$\nabla$(ナブラ)は微分演算子と呼ばれるものです。詳しくはこちらで解説しています。

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粘性流体に作用する3つの力

まずは、非圧縮性粘性流体に作用する力について考えましょう。

簡単のため、$x$ 軸に対して平行方向に作用する力を考えます。

まず最初に思いつくのは、圧力です。

流体には圧力が作用し、パスカルの原理から、圧力の方向は面に対して垂直であると言えます。

したがって、$yz$ 平面に対しては、圧力が $x$ 軸方向に対して水平方向に作用することが分かります。

次に考えられるのは、重力のような体積力です。

体積力は名前の通り、体積に比例して増加するという特徴があります。

最後に考えなければいけないのは、粘性力です。

今回は粘性流体を考えているため、粘性力も考えなければなりません。

したがって、流体に作用する力は、圧力・体積力・粘性力の3つであると言えます。

粘性流体に作用する力

非圧縮性粘性流体には以下の3つの力が作用する

圧力 $\B{p}$、体積力 $\B{f}$、粘性力 $\B{q}$

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粘性力の導出

流体に作用する力

圧力を $p$ とすると、$\diff x$ 離れた面に作用する圧力は $\DL{p+\ff{\del p}{\del x}}$ と表せます。

したがって、正味の圧力は $-\DL{\ff{\del p}{\del x}}$ とでき、

$\diff x = 1, \diff y = 1, \diff z = 1$ とすると、圧力による正味の力を $-\DL{\ff{\del p}{\del x}}$ と表示できます。

一方、粘性力は面を離す力に対し、抵抗する方向に作用する力であるため、図のような矢印の向きとなります。

これより、正味の粘性力を次のように計算できます。

\begin{split}
-\s_{xx}+\left(\s_{xx}+\ff{\del \s_{xx}}{\del x}\right) = \ff{\del \s_{xx}}{\del x}
\end{split}

この結果は、流速 $u$ と粘性係数 $\mu$ を用いて次のように整理できます。

\begin{split}
\ff{\del\sigma_{xx}}{\del x} = \mu\ff{\del^2 u}{\del x^2}
\end{split}

$\tau_{yx}, \tau{zx}$ についても同様に計算でき、$x$ 軸方向に作用する粘性力を求められます。

以上より、粘性力 $q_x$ は用いて次のように表せます。

\begin{split}
q_x=\mu\left( \ff{\del^2 u}{\del x^2}+\ff{\del^2 u}{\del y^2}+\ff{\del^2 u}{\del z^2} \right)
\end{split}

詳しくはこちらで解説していますが、粘性力は一般に次のように表せることが知られています。

流体に作用する粘性力

流速ベクトルを $\B{v}$、粘性係数を $\mu$ とする。

このとき、粘性力 $\B{q}$ は次のように表せる。

\begin{split}
\B{q}=\mu\nabla^2 \B{v} \\
\,
\end{split}

粘性力を計算できたので、いよいよナビエストークス方程式の導出に取り組みます。

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ナビエ・ストークス方程式の導出

それでは、$x$ 軸方向に関する運動方程式を導いていきましょう。

まず、運動方程式の基本的な形は、次のように表せました。

\begin{split}
F_x=ma_x
\end{split}

これまでの考察より、$F_x$ は簡単に求めることができます。

また、質量に関しても流体の密度を $\rho$ として、$m=\rho(\diff x\diff y\diff z)$ とできます。

今、$\diff x = 1, \diff y = 1, \diff z = 1$ とすると、質量は $\rho$ とできます。

問題となるのは、加速度 $a_x$ です。

普通の感覚で考えると、流速を $u$ として、$\DL{a_x = \ff{\diff u}{\diff t}}$ と記述できるように思えますが、

直感に反し、流体力学においては次のように加速度が記述されます。

\begin{split}
a_x&=\ff{D u}{D t} \\[6pt]
&= \ff{\del u}{\del t}+u\ff{\del u}{\del x}+v\ff{\del u}{\del y}+w\ff{\del u}{\del z}
\end{split}

ただし、$\DL{\ff{D}{D t}}$ は物質微分を表します。

これより、運動方程式の右辺は次のように表すことができるのです。

\begin{split}
ma_x&=\rho\ff{D u}{D t}\EE
&= \rho\left(\ff{\del u}{\del t}+u\ff{\del u}{\del x}+v\ff{\del u}{\del y}+w\ff{\del u}{\del z}\right)
\end{split}

$\nabla$ は”ナブラ”と呼ばれる微分演算子です。詳しくはこちらで解説しています。

一方、左辺は圧力・粘性力・体積力の和なので、

\begin{split}
F_x&=-\ff{\del p}{\del x}+\mu\nabla^2 u+f_x
\end{split}

とできます。

以上より、運動方程式を次のように記述できます。

\begin{split}
\rho\left(\ff{\del u}{\del t}+u\ff{\del u}{\del x}+v\ff{\del u}{\del y}+w\ff{\del u}{\del z}\right) &=-\ff{\del p}{\del x}+\mu\nabla^2 u+f_x
\end{split}

少し整理すると、このようになり、

\begin{split}
\rho\left(\ff{\del u}{\del t}+u\ff{\del u}{\del x}+v\ff{\del u}{\del y}+w\ff{\del u}{\del z}\right) &=-\ff{1}{\rho}\ff{\del p}{\del x}+\ff{\mu}{\rho}\nabla^2 u+f_x
\end{split}

さらに、動粘性係数 $\nu$(ニュー)は $\DL{\nu=\ff{\mu}{\rho}}$ と表せるため、次のようにできます。

\begin{split}
\ff{\del u}{\del t}+u\ff{\del u}{\del x}+v\ff{\del u}{\del y}+w\ff{\del u}{\del z}&=-\ff{1}{\rho}\ff{\del p}{\del x}+\nu\nabla^2 u+f_x
\end{split}

$y, z$ 軸方向についても同様に考えることができ、

非圧縮性粘性流体の運動方程式、すなわちナビエストークス方程式が導けます。

$$
\left\{
\begin{split}
&\ff{\del u}{\del t}+u\ff{\del u}{\del x}+v\ff{\del u}{\del y}+w\ff{\del u}{\del z} =-\ff{1}{\rho}\ff{\del p}{\del x}+\nu\left( \ff{\del^2 u}{\del x^2}+\ff{\del^2 u}{\del y^2}+\ff{\del^2 u}{\del z^2} \right)+f_x \\[6pt]
&\ff{\del v}{\del t}+u\ff{\del v}{\del x}+v\ff{\del v}{\del y}+w\ff{\del v}{\del z} =-\ff{1}{\rho}\ff{\del p}{\del y}+\nu\left( \ff{\del^2 v}{\del x^2}+\ff{\del^2 v}{\del y^2}+\ff{\del^2 v}{\del z^2} \right)+f_y \\[6pt]
&\ff{\del w}{\del t}+u\ff{\del w}{\del x}+v\ff{\del w}{\del y}+w\ff{\del w}{\del z} =-\ff{1}{\rho}\ff{\del p}{\del z}+\nu\left( \ff{\del^2 w}{\del x^2}+\ff{\del^2 w}{\del y^2}+\ff{\del^2 w}{\del z^2} \right)+f_z
\end{split}
\right.
$$

このままでは、見づらいので、ベクトル解析の記号を使いましょう。

すると、ナビエ・ストークス方程式は以下のように簡単にできます。

\begin{split}
\ff{\del \B{v}}{\del t}+\B{v}(\nabla\cdot \B{v})&=-\ff{1}{\rho}\nabla p+\nu\nabla^2 \B{v}+f_x
\end{split}

ナビエ・ストークス方程式

流体の速度ベクトルを $\B{v}$、密度を$\rho$(ロー)、
圧力を$p$、動粘性度を$\nu$(ニュー)とする。
このとき、ナビエ・ストークス方程式は次のように記述される。

\begin{split}
\ff{\del \B{v}}{\del t} + (\B{v}\cdot \nabla)\B{v} = -\ff{1}{\rho}\nabla p +\nu\nabla^2 \B{v}+ \B{f}\\
\,
\end{split}

ただし、$\B{f}$ を体積力とする。

粘性を無視できる流体では、右辺第二項が $0$ となって、オイラーの運動方程式と一致することが分かります。

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ナビエ・ストークス方程式は解けるか?

ナビエ・ストークス方程式を解くことができれば、ニュートン流体の運動を完全に把握することができます。

ナビエ・ストークス方程式が解けるのかについて少し考えてみましょう。

まず、未知数の数についてですが、これは流速の $u, v, w$ の3つと、圧力の1つであり、計4つであることが分かります。

※ 体積力に関しては重力や電磁気力などであり、既知の数式として表せるため、未知数には含まれません。

さて、ナビエストークス方程式を成分表示すると、3つの連立方程式になることはこれまでの議論kら分かります。

通常の連立方程式の感覚で考えると、あと一つ方程式があればナビエ・ストークス方程式が解けように感じれらます。

実際、もう一つ方程式があり、この方程式は連続方程式と呼ばれるものです。

4つの方程式が得られたため、ナビエ・ストークス方程式を解くことができます。と、言いたいところですが、そうは上手くいきません。

ポイントは、ナビエ・ストークス方程式が非線形微分方程式であるということです。

ナビエ・ストークス方程式の非線形項に相当するのは、左辺第二項です。

非線形項は、未知変数のような振る舞いをします。

そのため、当初よりも未知変数が増え、解くためには4本以上の方程式が必要になります。

ナビエストークス方程式の未知数を確定させるためには12本の方程式が必要ですが、12本の方程式は得られていません。

ゆえに、ナビエ・ストークス方程式は現在でも解かれてはいません。

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