磁場・透磁率とは?|磁力の大きさと物質の磁化のしやすさ

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電気と似た性質を持つ物理学の対象として磁気があります。磁気を持つものは身近に存在しおり、理科の授業でおなじみの棒磁石やU字型磁石はもちろんのこと、家電製品や電気自動車、果ては地球や太陽も磁気を帯びています。

さて、磁気にも電気と同様、物体ごとに磁気の通り易さが異なります。物理学では磁気の通り易さを定量化して、これを透磁率と呼びます。

透磁率とは?

透磁率:材料の磁場(磁束密度)の通りやすさ (=磁化のしやすさ) を表す定数

透磁率は物質ごとに固有の定数となりますが、電磁気学では特に、真空の透磁率が重要となります。

今回は磁気と磁気が従う基本的な法則について説明します。まずは、磁気が作用する舞台となる磁場についての説明から行います。

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磁場とは?

磁石による磁気的現象の存在は古くから知られており、英語の $\RM{magnet}$ は古代ギリシャのマグネシアという地方で磁鉄鉱が採掘されていたことに由来すると言われています。

そして、$11$ 世紀には磁石を水に浮かべて方位を知る原始的な羅針盤が発明され、人々は磁石を活用するようになりますが、科学的に磁石の性質が調べられるようになったのは比較的最近であり、$17$ 世紀に入ってからでした。

さて、磁石同士を近づけた時、反発したり引き合ったりすることから分かるように、磁気電荷と似た性質を持つことに気が付きます。

そして、磁気による力も電場と同様に空間のを通して伝えられます。そのため、磁気の力が及ぶ空間は磁場と呼ばれます。

磁場とは?

電流が作り出す、磁気力が作用するベクトル場磁場と呼ぶ。

例えば、電流 $I$ が流れる導線から距離 $r$ 離れた位置での磁場の大きさは次のように与えられる。

\begin{split}
|\B{H}(r)|=\ff{I}{2\pi r} \\
\,
\end{split}

次に、二つの磁極の間に作用する磁気力の大きさについて考えていきます。

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磁場とクーロンの法則

ところで、棒磁石を砂鉄に近づけると両端付近に多く砂鉄が付着する様子が確認できます。物理学では、この部分のことを磁極と呼びます。

磁気による力も静電気力と似ていて磁極同士に作用する力は、同種同士の磁極のときは反発力(=斤力)、異種の磁極同士には引力が作用します。

このような作用を持つ磁気力について、クーロンは科学的に調べました。静電気力の測定と同様、クーロンはねじり天秤と棒磁石を用いて、二つの磁極の間に作用する磁気力の大きさを定量的に調べました。その結果、磁気力が次の関係に従うことを見出しました。

磁気力に関するクーロンの法則とは?

二つの磁極磁気量をそれぞれ $m_1,m_2$ とする。

このとき、磁極 $m_2$ に作用する $m_1$ からの磁気力 $\B{F}_{12}$ は次のように表せる。

\begin{split}
\B{F}_{12}=k_m\ff{m_1m_2}{|\B{r}|^3}\B{r}
\end{split}

ただし、$\B{r}$ を $m_1$ が始点で $m_2$ が終点のベクトル、$k_m$ を比例定数とする。

磁気力とクーロンの法則

磁気量とは?

上で示したように、磁気力の大きさも静電気力と同様の式で表されます。磁気量を説明無しに使っていますが、磁気量についての説明を行います。

さて、真空中に強さの等しい二つの磁極を $1\,\RM{m}$ 離して置いた状況について考えます。このとき、磁気力の大きさが $6.33\times 10^{4}\,\RM{N}$ となったとします。

電磁気学では、このときの磁気量を $1$ ウェーバ と定義し、磁気量の記号として $\RM{Wb}$ を用います。

ウェーバとは?

真空中で強さの等しい二つの磁極を $1\,\RM{m}$ 離して置いたとする。

このとき、磁気力の大きさが $6.33\times 10^{4}\,\RM{N}$ となる磁気量を $1$ ウェーバ と定義する。

なお、ウェーバの記号として $\RM{Wb}$ を用いる。

磁場については、$\B{H}$ のアルファベットを割り当てることが多く、電場と同様の性質があります。すなわち、磁場が $\B{H}$ の空間に磁気量 $m$ の磁極を置くと、この磁極が受ける力 $\B{F}$ は、

\begin{split}
\B{F}=m\B{H}
\end{split}

の関係にあります。

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透磁率とは?

磁気力に関するクーロンの法則から分かるように、磁気力静電気力についてのクーロンの法則と同じ形をしています。

ところで、真空中での静電気力は、

\begin{split}
\B{F}_{12}=k\ff{q_1q_2}{|\B{r}|^3}\B{r}=\ff{1}{4\pi\eps_0}\cdot\ff{q_1q_2}{|\B{r}|^3}\B{r}
\end{split}

とも表せます。上式に登場する $\eps_0$ は真空の誘電率と呼ばれる物理定数です。なお、真空の誘電率は”真空中での電場の通り易さ”を表す定数と言えます。

さて、上式の類推から、磁場についても真空の誘電率に相当する物理定数が存在すると予想できます。

実際、この予想は正しくて、真空中での磁場(磁束)の通りやすさ (=磁化のしやすさ) を表す物理定数が存在します。この定数は真空の透磁率と呼ばれており、通常 $\mu_0$ と表されます。なお、$\mu_0$ は次のように定義されています。

\begin{split}
\mu_0=4\pi\times 10^{-7}
\end{split}

また、真空に限らず材料ごとに磁場(磁束)の通りやすさ (=磁化のしやすさ) は異なります。したがって、誘電率と同じように透磁率 $\mu$ と呼ばれる定数を次のように定義することにします。

透磁率とは?

透磁率:材料の磁場(磁束)の通りやすさ (=磁化のしやすさ) を表す定数

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