電位・静電ポテンシャルとは?|静電場のポテンシャルエネルギー

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電場から電気力線の概念が得られましたが、もう一つの重要な概念として電位というものが登場します。

今回は電位について説明します。さて、電位静電ポテンシャルとも呼ばれるポテンシャルエネルギーの一種であり、次のように説明される概念です。

電位とは?

電気量 $Q$ の電荷について、次のように表されるポテンシャルエネルギーのことを電位と呼び、
単位としてボルト $[\RM{V}]$ を用いる。

\begin{split}
\phi=-k\ff{Q}{r}
\end{split}

ただし、$k$ をクーロン定数、$r$ を電荷からの距離とする。

また、電場を $\B{E}$ として電位 $\phi$(ファイ)との間に次の関係が成立する。

\begin{split}
\B{E}=-\RM{grad}\,\phi=-\nabla \phi\\
\end{split}

※ $\nabla$ は”ナブラ”と読みます。ナブラについて詳しくはこちらで解説しています。

電位が上のように表される理由を説明するため、まずは静電気力が作用している空間で電荷を動かすのに必要な仕事の計算を行います。

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静電気力と仕事

復習になりますが、電気量 $Q$ の電荷により形成される電場 $\B{E}$ は次のように与えられました。(※太字の文字はベクトルを表します。詳しくはこちらで解説しています。)

\begin{split}
\B{E}=k\ff{Q}{r^3}\B{r}
\end{split}

したがって、この電場電気量 $q$ の電荷が受ける静電気力 $\B{F}$ を次のように計算できます。

\begin{split}
\B{F}=q\cdot\B{E}=k\ff{qQ}{r^3}\B{r}
\end{split}

電場の模式図

この状況の下、静電気力に逆らって正電荷を $\B{\diff r}$ だけ移動させるのに必要な仕事 $\diff W$ は以下のように求められます。

\begin{split}
\diff W=-\B{F}\cdot \B{\diff r}=-k\ff{qQ}{r^3}\B{r}\cdot \ff{\B{r}}{r}\diff r=-k\ff{qQ}{r^2}\diff r
\end{split}

現実にはできませんが、正電荷を無限遠から $r$ まで近づける状況を考えると、これに要する仕事は積分によって

\begin{split}
W&=\int\diff W\\
&=-\int_{\infty}^r k\ff{qQ}{r^2}\diff r=-kqQ\left[\ff{1}{r} \right]_{\infty}^r\EE
&=-k\ff{qQ}{r}
\end{split}

と求められます。

ところで、このような形で表される仕事の形に見覚えは無いでしょうか?そうです。重力によるポテンシャルエネルギー(=位置エネルギー)です。実際、重力のポテンシャルエネルギー $U$ は次のように表せました。

\begin{split}
U=-G\ff{mM}{r}
\end{split}

このことから、静電気力の仕事についてもポテンシャルエネルギーと言えそうだと予想されます。次節にて、この予想を証明していきます。

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電位とは?

ところで、ある力 $\B{F}$ が保存力であるかどうかの必要十分条件は次のように与えられました。

\begin{split}
\nabla\times\B{F}=\B{0}
\end{split}

左辺を展開すると、

\begin{split}
\nabla\times\B{F}&=
\begin{vmatrix}
\B{i}&\B{j}&\B{k}\\
\DL{\ff{\del}{\del x}}&\DL{\ff{\del}{\del y}}&\DL{\ff{\del}{\del z}}\\
F_x&F_y&F_z
\end{vmatrix}\\
&=\left(\ff{\del F_z}{\del y}-\ff{\del F_y}{\del z} \right)\B{i}+\left(\ff{\del F_x}{\del z}-\ff{\del F_z}{\del x} \right)\B{j}+\left(\ff{\del F_y}{\del x}-\ff{\del F_x}{\del y} \right)\B{k}
\end{split}

とできます。今、静電気力 $\B{F}$ は具体的には $\B{F}=\DL{ (F_x,F_y,F_z)=k\ff{qQ}{r^3}(x,y,z) }$ と表示できるので、上の計算結果は $\B{0}$ となります。ゆえに、静電気力

\begin{split}
\nabla\times\B{F}=\B{0}
\end{split}

を満たします。したがって、『静電気力は保存力である』ということが言えます。

ここからが本題です。ある保存力であるとき、ポテンシャルエネルギーが対応します。すなわち、ポテンシャルエネルギー $U$ と保存力 $\B{F}$ の間には

\begin{split}
\B{F}=-\RM{grad}\,U=-\nabla U
\end{split}

の対応関係が成立し、今、$\B{F}=\DL{k\ff{qQ}{r^3}(x,y,z) }$ なので、こちらで計算した結果から分かるように $U$ が

\begin{split}
U=-k\ff{qQ}{r}
\end{split}

であることが分かります。

このように表されるポテンシャルエネルギーは、静電気力に関するポテンシャルエネルギーのため、静電ポテンシャルという名前で呼ばれます。

さらに、$1\,\RM{C}$ 当たりの静電ポテンシャルを $\phi$ で表し、電位と呼ぶことにします。電位を導入すると、上の静電ポテンシャル

\begin{split}
\ff{\B{F}}{q}=-\RM{grad}\,\ff{U}{q}=-\RM{grad}\,\phi
\end{split}

とできます。さらに、左辺のように表される静電気力電場と読み替えることができるので、

\begin{split}
\B{E}=-\RM{grad}\,\phi=-\nabla \phi
\end{split}

の関係が成立すると言えます。

電位とは?

電気量 $Q$ の電荷について、次のように表されるポテンシャルエネルギーのことを電位と呼び、
単位としてボルト $[\RM{V}]$ を用いる。

\begin{split}
\phi=-k\ff{Q}{r}
\end{split}

ただし、$k$ をクーロン定数、$r$ を電荷からの距離とする。

また、電場を $\B{E}$ として電位 $\phi$(ファイ)との間に次の関係が成立する。

\begin{split}
\B{E}=-\RM{grad}\,\phi=-\nabla \phi\\
\,
\end{split}

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電位とポアソン方程式

ところで、微分型のガウスの法則あるいはマクスウェル方程式から言えるように、電場電気量の間には次のような関係がありました。

\begin{split}
\RM{div}\B{E}=\nabla\cdot \B{E}=4\pi k\sigma
\end{split}

これに先程求めた電場と電位の関係を適用すると、

\begin{split}
\RM{div}(-\RM{grad}\,\phi)=\nabla\cdot(-\nabla \phi)=4\pi k\sigma
\end{split}

となります。これにラプラシアンの性質を適用すると、

\begin{split}
-\nabla\cdot(\nabla \phi)=-\nabla^2\phi=-\D\phi=4\pi k\sigma
\end{split}

とできます。ゆえに、

\begin{split}
\D\phi=\ff{\del^2\phi}{\del x^2}+\ff{\del^2\phi}{\del y^2}+\ff{\del^2\phi}{\del z^2}=-4\pi k\sigma
\end{split}

という偏微分方程式が得られます。なお、このように表される方程式のことをポアソン方程式とも呼びます。

電位のポアソン方程式

電荷密度 $\sigma$(シグマ)の電荷が形成する電位スカラー関数 $\phi$ は、次のポアソン方程式を満たす。

\begin{split}
\D\phi=\ff{\del^2\phi}{\del x^2}+\ff{\del^2\phi}{\del y^2}+\ff{\del^2\phi}{\del z^2}=-4\pi k\sigma
\end{split}

ただし、$k$ をクーロン定数とする。

また、電荷の存在しない点では、電位は以下のラプラス方程式を満たす。

\begin{split}
\D\phi=\ff{\del^2\phi}{\del x^2}+\ff{\del^2\phi}{\del y^2}+\ff{\del^2\phi}{\del z^2}=0\\
\,
\end{split}

また、例えば電荷周辺の空間など、電荷が存在しない点では $\sigma=0$ となるので、

\begin{split}
\D\phi=\ff{\del^2\phi}{\del x^2}+\ff{\del^2\phi}{\del y^2}+\ff{\del^2\phi}{\del z^2}=0
\end{split}

が成り立ちます。そして、このような方程式のことをラプラス方程式と呼びます。

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等電位面とは?

電位の表式から分かるように、電荷からの距離が等しければ電位は等しくなります。

したがって、電荷からの距離が等しい点同士は電位が等しくなり、これらの点を結ぶと等高線のような曲線あるいは曲面が現れることになります。

そして、このような曲線あるいは曲面のことを等電位線あるいは等電位面と呼びます。たとえば、点電荷であれば円あるいは球面が等電位線あるいは等電位面となります。

等電位線(面)とは?

等電位線(面)電位の等しい点を結んでできる曲線(面)のこと

実際に正あるいは負電荷が形成する等電位面等電位線を描くと下図のようになります。

正電荷と負電荷の等電位線の模式図

左図は正電荷と負電荷が存在している場合の等電位面と等電位線の模式図で、右図は正電荷同士の等電位面と等電位線を表します。

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