クエット流れの流速分布の導出【ナビエストークス方程式の厳密解】

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二次元ポアズイユ流れに引き続き、ナビエ・ストークス方程式を用いて、クエット流れの流速分布を導出します。

クエット流れとは、二枚の平行平板に挟まれた領域の流れのことで、片方の平板が速度 $U$ で運動していることが特徴です。

クエット流れの流速分布

粘性係数を $\mu$、平行平板間の距離を $h$、片方の板の速度を $U$ とする。

このとき、クエット流れの流速分布は次のように表せる。

\begin{split}
u(y)=\ff{U}{h}y+\ff{1}{2\mu}\ff{\diff p}{\diff x}y(y-h)
\end{split}

クエット流れについて考察を深めると、流体軸受けが作動する理論的な背景を導くことができます。

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クエット流れとは?

二次元ポアズイユ流れと同様に、距離 $h$ 離れた平行平板間の流れを考えます。

ただし、今回は、片方の平板を速度 $U$ で運動させたときの流れを考えます。また、この間の流れは定常流であるとします。

クエット流れの模式図

このように、一方の平板が一定の速度で運動していて、平行平板間の流れが定常流であるような流れのことを、クエット流れと呼びます。

今回は、クエット流れの速度分布について考えていきましょう。なお、流体は非圧縮性流体とし、平行平板間の間を流れる定常流は一方向のみに流れているとします。

この仮定により、流速の成分については $v=w=0$ とできます。

この条件をナビエ・ストークス方程式に適用することで、クエット流れの基礎方程式を導いていきます。

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クエット流れの厳密解

先述の仮定を用いることで、次のようなクエット流れの基礎方程式が導けます。

\begin{split}
\ff{\diff^2 u}{\diff y^2}=\ff{1}{\mu}\ff{\diff p}{\diff x}
\end{split}

ただし、$p$ を圧力、$\mu$(ミュー)を粘性係数とします。

詳しい導出過程については、こちらで解説しています。

この方程式を $y$ で二回積分すると、次のような流速分布の一般解を求められます。

\begin{split}
u=\ff{1}{2\mu}\ff{\diff p}{\diff x}y^2+C_1\,y+C_2
\end{split}

ただし、$C_1, C_2$ を積分定数とします。

次に、積分定数を具体的に求めていきましょう。積分定数は、境界条件より決定できます。すなわち、$y=0$ にて $u=0$、$y=h$ にて $u=U$ が今回の境界条件であるので、

$$
\left\{
\begin{split}
C_1 &= \ff{U}{h}-\ff{1}{2\mu}\ff{\diff p}{\diff x}h \\[6pt]
C_2 &= 0
\end{split}
\right.
$$

と積分定数を決定できます。これより流速分布は次のようになります。

クエット流れの流速分布

粘性係数を $\mu$、平行平板間の距離を $h$、片方の板の速度を $U$ とする。

このとき、クエット流れの流速分布は次のように表せる。

\begin{split}
u(y)=\ff{U}{h}y+\ff{1}{2\mu}\ff{\diff p}{\diff x}y(y-h)
\end{split}

クエット流れの流速分布を二次元ポアズイユ流れと比較すると、第一項が新たに追加されていることが分かります。

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一次元レイノルズ流れの方程式

クエット流れ自体は単純な流れですが、流体軸受けの流れのモデルとして利用できます。

詳しい解説は別の機会に行いますが、流体軸受けを解析するための準備を行います。

まずは、クエット流れの流量について求めます。今、流量を $Q$ とすると、次のように求めることができます。ただし、$\rho = 1$ とします。

\begin{split}
Q&=\int_0^h u\,\diff y\EE
&=\int_0^h \left( \ff{U}{h}y+\ff{1}{2\mu}\ff{\diff p}{\diff x}y(y-h) \right)\diff y \\[6pt]
&=\ff{1}{2}Uh-\ff{h^3}{12\mu}\ff{\diff p}{\diff x}
\end{split}

次に、連続方程式について考えます。

流体が非圧縮性かつ、一方向にのみ流れていることを利用すると、連続方程式の中で $\DL{\ff{\diff Q}{\diff x}}$ のみが残り、このとき、$\DL{\ff{\diff Q}{\diff x}=0}$ の関係があるため、

この関係をに適用して上式 $x$ に関して微分してやると、

\begin{split}
&0=\ff{\diff}{\diff x}\left(\ff{1}{2}Uh-\ff{h^3}{12\mu}\ff{\diff p}{\diff x}\right) \\[6pt]
&\therefore\,\,\ff{\diff}{\diff x}\left( \ff{h^3}{\mu}\ff{\diff p}{\diff x} \right) =6U\ff{\diff h}{\diff x}
\end{split}

という関係式が導けます。

一次元レイノルズ方程式

次の方程式を一次元レイノルズ方程式と呼ぶ。

\begin{split}
\ff{\diff}{\diff x}\left( \ff{h^3}{\mu}\ff{\diff p}{\diff x} \right) =6U\ff{\diff h}{\diff x}\\
\,
\end{split}

専門的には、この方程式を一次元レイノルズ方程式と呼びます。

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流体潤滑理論への招待

世間には流体軸受けという流体の薄い膜によって非接触で回転軸を支える軸受けが存在します。

流体軸受けには個体同士の接触箇所が存在しないため、潤滑油が存在する限り、半永久的に使用できるという利点があります。

日常の感覚では、流体が鉄の固まりを支持するなど不可能なように感じます。しかし、現実に流体軸受けは機能し工作機械などに利用されています。

手品でも魔法でもなく、さらさらした流体が重い軸受けを支えられる理由には、流体力学が関わっています。

流体軸受けが動作するメカニズムは、流体力学の一分野である流体潤滑理論から説明することができます。

流体軸受けがなぜ動作するのかについて、次回考えていきます。

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